標準医療と代替医療
- 標準(通常)医療≒科学的根拠が認められるもの≒保険が効くもの。(おおざっぱに言えば)
- 標準医療は日々進歩している(新しい治療法など)。
- 非標準医療の中にも、有効性が認められ、標準医療の仲間入りをするものもある。
- 非標準医療=代替医療、と思って良い。
- しかし、代替医療は「将来有望そうなもの」から「ダメとわかっているのに根強く行われているもの」「かえって害のあるもの」まで幅広くある。
- まずは「標準医療」の理解。
この問題を考えるにあたって
- 今年(2010年)1月に出版された『代替医療のトリック』は、今後、この手の問題を考えるにあたってのスタンダードとなるだろう。
- 医歯薬系の人は必読と言っても過言ではない。また、「効果がある」を科学的に検証したい人にとっても示唆的(たとえば「この方法は教育効果があるか?」など)。
医療・薬の検証の仕組み
- 体験談は根拠にならない
- 自然治癒かもしれない、別の薬/治療のためかもしれない
- 偶然やあやふやな根拠に頼るわけにはいかない
- 三た論法に注意
- 四枚カード問題を思い出そう
- 治ったのはその薬を飲んだせいとは限らない
- 「鰯(いわし)の頭も信心から」「効くと思って飲めば効く」…プラセボ(偽薬)効果:人間の精神力はたいしたもの
- cf. 「火事場の馬鹿力」…無意識のうちに力をセーブしている
- 人間の精神が身体に及ぼす影響は絶大(過大評価しても過小評価してもいけない)
- どうやって「効いた」を科学にするか?
いくつかの事例(1)瀉血
- 血管を切って血を出すこと。欧米で広く行われていた。
- かみそりで切ったり、ヒルに血を吸わせたり…
- 床屋の赤白青のポールは瀉血を行っていた頃の名残
- 1833年のフランスでは、4200万匹の医療用ヒルが輸入
- スコットランドの軍医ハミルトンは、1803年に、遠征中に兵士366人を3グループに分け、第1、第2グループは彼と同僚が瀉血を用いないで、第3のグループは別の医師が瀉血で治療を行った。
- どのグループに割り当てられるかはランダム。同じ看護、同じ居住条件に揃えた
- 死者は、第1で4人、第2で2人、第3で35人。瀉血を受けた患者の死亡率はそれ以外の10倍!
- しかし、結果を発表しなかったため、瀉血が排除されるまでには時間がかかった
いくつかの事例(2)ナイチンゲール
- フローレンス・ナイチンゲール(1820-1910)
- クリミア戦争に従軍、病院の衛生状態の改善に尽力
- 収容兵士の死亡率が43%(1855/2)→2%(1855/6)に激減
- しかし反論も。「軽傷の兵士まで手当てしたから」「気候の良い時期に治療したから」など。(こういう疑問は大事)
- 統計を駆使し、再反論。
- 改善前の病院での死亡率と、同時期の部隊に居た兵士たちの死亡率を比較。病院での死亡率が20倍近かった。
- 様々なデータを駆使し、またプレゼンテーションに工夫をこらし、政府を説得した。
- 平時の兵士の死亡率が高いため兵舎の改善を訴え「英国陸軍は、毎年千百人の兵士を選んでソールズベリー平原に立たせ、撃ち殺しているようなものである」痛烈な皮肉。
いくつかの事例(3)ゼンメルワイス
- ゼンメルワイス(1818-1865)。ハンガリー。
- 産褥熱の予防のため、塩素水による手洗いを提唱。
- 勤務する病院には第1、第2産科があり、前者は医師が、後者は助産師が担当(医師養成と助産師養成)
- 色々調べた末、死体解剖の際に毒物が付着し、そのまま出産に携わることにより感染するのでは、と推測、手洗いを提唱する。
- 開始直後から劇的に改善。
- 真の原因やメカニズムがわからなくても正しい結論(→疫学)
- しかし医師らは「自分たちのせいで妊婦を死に至らしめた」ことを認めることができず、無視された。
- 参考:「どらねこ日誌」http://blogs.dion.ne.jp/doramao/archives/8679840.html
科学的根拠に基づく医療
- 患者を分けて比較することが重要
- これによって、問題の原因を突き止めることが可能になる
- 実際には、なかなか単純にはいかない
- しかし、客観的な検証が可能な方法でチェックすることが、よりよい方法を確立するための第一歩
- 「科学的根拠に基づく医療」Evidence-based Medicine (EBM)
- 偉大な「反主流派」の人々は、科学的根拠を提示し、標準医療を変革していった
- 「反主流派」がみな偉大なわけではない。大半の「反主流派」は、思いこみや妄想による根拠しか示せず、害をまき散らし、やがて消えていく。
プラセボ効果
- 患者に偽の薬(プラセボ/プラシーボ/偽薬)を与えても、まるで本当の薬を与えたかのような効果が得られることがある
- 詳細は不明。
- たまたま自然治癒した→体験談はあてにならない
- 治った気になってしまった→実際は治っていないのに!
- 心理的効果が身体的変化を引き起こすこともあるかもしれない→本当に改善する場合もある
- 逆の効果もある。副作用を気にするあまり、自分を病気にしてしまう。
- 「歯の詰め物から溶ける物質が体に悪影響を与える」
- 「電磁波のせいで頭痛がする」などなど
- 「鰯の頭も信心から」
プラセボ効果
- 薬の/治療法の「効果」を評価する際、プラセボ効果の寄与を引かないといけない。
- 「効く薬」…(薬の成分による効果)+(プラセボ効果)
- 「効かない薬」…(プラセボ効果)
- 無論、プラセボ効果は医師への信頼度にも依る
- 同じ医者でも、白衣を着て薬を渡すのと、Tシャツで渡すのでは効果が異なるかもしれない
- プラセボ効果のみに頼る医療は「嘘」の医療。積極的に用いるべきではない(医療に不誠実さを要求し、医療を蝕む)。
- 薬効がないのに「効く」と騙す
- プラセボしかない薬だけに頼り、標準医療を忌避する場合
- (例えば)砂糖粒を薬として販売することも止められないかも
プラセボ効果を差っ引くには
- 似たような症状を示す患者たちを、「試したい薬」を与えた患者と、「偽薬」(小麦粉など)を与えた患者に分ける。
- 患者は、自分の薬がどちらかを知らない。
- 知ってしまったら、偽薬を投与された患者は薬効を期待せず、プラセボ効果も働かないであろう。
- 一方、「試したい薬」を投与された患者は薬効を期待し、プラセボ効果が働くであろう
- もし、効果が同程度であれば、「試したい薬」は「効かない」と判定されるべき。
- 患者がどちらの薬を投与されているかを知らされないで試験する方法…「盲検法」
- しかし、実際はこれでは不十分
処置者の対応
- 盲検法の不十分な点
- 医師が「この患者には新薬を投与している」と思うと、知らず知らず「効くはずだ」と思い、対応を変えてしまう
- 医師の対応が変われば、患者にも影響が出る、あるいは医師の診断結果の解釈が影響される
- そんなに影響が出るものだろうか?
- 一つの例…教育における教師の対応
- 「BS世界のドキュメンタリー 青い目 茶色い目 ~教室は目の色で分けられた~」より(血液型性格判断とも関連する内容)
- 安易にマネをしてはダメ。ネット上にあります。検索してください。
- 過去に「効果がある」と思われていた治療法の多くが、実はプラセボに過ぎないとわかって捨てられていった。
- 医師も、自分がどちらの患者を診ているのか知ってはいけない。→二重盲検法
二重盲検法を活用した方法
- 薬はともかく、治療法となると、いつでも可能というわけではない(信頼度は落ちるが別の方法を用いる)。
薬や治療法が認可されるまで
- 実際には、このような研究には多大な経費が必要
- どうやって「有望」と見極めるのか?
- 試験管内実験(in vitro)⇔生体内(in vivo)
- 動物実験
- (ヒト以外の)動物とヒトでは、薬物への反応が大きく違うことが十分あり得る(異なる動物同士でも!)。
- ダイオキシンの半数致死量はモルモットとハムスターでは8000倍違う
- サッカリンはラットで発がん性があるとされたが、ヒトにはないことがその後判明した
- 動物実験段階では、ヒトに有効かどうかはわからない
- どんな批判にも耐え得る「根拠」を獲得するまで厳しい実験や検証が続けられ、ようやく認可される。
- 代替医療はこの検証にパスしていない。
なぜ代替医療に人気が出るのか
- 「西洋」医学への不満
- 医師は忙しい(政治的社会的要因)。患者にとっては自分が100%であり、じっくり話を聞いてもらいたい。しかし医師にとっては目の前の患者は多くの患者の一人。ギャップ。
- 現代医療は完璧ではない。治せない病気もある。投薬や手術も100%を保証できるわけではない。残念ながら治療がうまくいかない場合もある。
- しかし、自分が「うまくいかない場合」に入ってしまったら?それを受け入れるのは大変。誰かのせいにしたいかもしれない。医師のせい?現代医療のせい?
- 代替医療はゆっくり話を聞く(金がかかることが多いが…)
- 信頼関係を構築し、治った気にさせる
- 標準医療への不信を煽る。デマを流す。「ワクチン危険!」
- 医療費の節約という目論見もあるかも…(国によっては十分な標準医療を提供できず代替医療に頼らざるを得ない)
わかりやすい代替医療:ホメオパシー
- プラセボ効果のみであることがわかっている療法。
- 「同種療法」とも呼ばれ、「「症状を起こすものは、その症状を取り去るものになる」という「同種の法則」が根本原則」(日本ホメオパシー医学協会)に基づく「療法」。
- 症状を起こす物質を極度に薄めて投与することで治癒させる→「レメディ」
- どれくらい薄めるのか?…「症状を起こす物質」の原子が一つも残らないぐらい!
- 「30C」のレメディは、100倍希釈を30回繰り返したもの(10030=1060倍、ちなみに 1mol=6×1023)
- これを砂糖玉に染み込ませる
- インフルエンザ用レメディ Influenzinum の中には、インフル患者の痰(sputum)から作るものもあるらしい…もちろん分子が残らないほど薄めるのだけど、、、
「レメディ」の作り方
- 希釈と震盪(しんとう)
- X:10倍、C:100倍に希釈
- 30C:100倍希釈を10回
- 10030=1060倍に希釈
- 1mol=6×1023個、つまり元の分子は1個も含まれないと期待される
- 希釈するたびに震盪(よく振る)。
ホメオパシー
- ハーネマン(1755-1843)が始祖。
- マラリアに効く薬を健康な時に飲んだところ、マラリアのような症状が出た。ここから、健康な人に特定の症状を引き起こす物質は、その症状を示す病人の治療に使えると考えた。
- レメディとは、要するに、ただの水や砂糖玉。しかし、200年前は医学が発達しておらず、瀉血などの危険な治療法が行われていた。それに比べれば、「なにもしない」ホメオパシーはかえってマシであったろう
- ナイチンゲールは、医師の指導に従わず、善意から近所の人や貧しい人々に取り寄せた薬をあげようとする「立派な御婦人方」に対し、ホメオパシーのレメディは比較的害もないので「一粒の愚行」としては都合が良い、と皮肉った。
- 「いわしの頭」と同じ。プラセボ以上のものではない。
ホメオパシーの広がり
- 日本ホメオパシー医学会理事の帯津良一氏などがテレビに出演し宣伝をすることがある。
- 芸能人が無邪気に宣伝する。
- サンプラザ中野くん氏は、近年は「ホメオパス中野」と名乗り、ホメオパス(ホメオパシー「医」)として「活躍」している。ホメオパスの「免許」(無論国家資格などではない)を取得したようだ。
- 日本ホメオパシー医学協会会長の由井寅子氏は、積極的にワクチンを否定している(標準医療の忌避)。
- 豚インフルエンザの流行に乗じ、ワクチンに否定的な見解を述べ、レメディで対応するよう呼びかけた。
- 無論、レメディはインフルエンザに対する効力はない
- 流行を悪化させかねない危険な発言
- 悪化しても「好転反応」(治癒へ向けての症状の変化)と強弁
ホメオパシーの「害」
- 標準医療の忌避
- インフルエンザなどの感染症の流行に手を貸す
- 予防接種はその人のためだけではない。流行を抑えることで、抵抗力の弱い人(子どもなど)の感染リスクを減らせる。
- オーストラリア在住のホメオパシー「医」が、自分の9ヶ月の娘が湿疹で苦しんでいる間、レメディのみを投与し、結局亡くなってしまった。裁判で有罪に。
- http://www.25today.com/news/2009/09/post_3843.php
- 由井寅子氏の発言…陰謀論的。「大騒ぎ」=豚インフル
助産師さんに浸透している?
- 乳児に与えるべき薬を投与せず、レメディを投与した結果、子どもが亡くなるということが現実に起きている
- レメディは毒にも薬にもならない。しかし、レメディを投与することで、本来投与されるべき薬が投与されなければ、重大なことになりかねない。
「波動」による説明
- 分子が一粒もないのに効能があるとするのをどう説明?
- 「波動」を持ち出すことがある。以下は由井寅子氏の発言。
- 「たとえば100cc当たりの粒子の数は、どんどん少なくなって毒性は薄まっていくのだけど、波動という相では希釈しても弱くなるとは限らないのよ。薄める倍率によって弱くなったり強くなったりするの。ホメオパシーはこの波動的に働きかけるということを昔から説いていました(…)」
- 「感情や心は目に見えない波動です。だから波動体であるレメディがうってつけなんです。」
- http://www.jphma.org/topics/media_station/magazine/magazine_c_g1.html
- 無論、前回話があったように、「波動」なるものは物理学で出てくる波動とは無関係。まったく意味がない。
波動測定とホメオパシー
- ホメオパシー・ジャパンが販売する波動機器「クォンタム・ゼイロイド」3,307,500円!
- 「ホメオパシー理論をベースに開発された、生体エネルギーの測定&修正システムです。9000以上の様々な問題(心、感情、精神、遺伝子、臓器、病原体、等々)に対応するレメディーへ被験者がどのような生理的反応を示すかを電気的反応パターンによって測定します。抵抗だけを測定する従来の波動機器とは全くことなり、QXは3次元的な電気的反応をみるこれまでにないシステムとなっています。また、3進法プログラムにより、潜在意識をインターフェイスする世界に類をみない波動機器です。」
その他の代替医療
- 色々あるが、ほとんどのものはその有効性が確認できない。漢方などは研究が行われている。心理的・精神的アプローチは、生化学的・生理学的効果は別にして、意味はあるだろう。
オカルトと結びついた代替医療の例
- 祈祷・浄霊など、新興宗教や民間伝承と結びついたもの
- 2010年1月、福岡で、アトピー性皮膚炎の乳児に対して「手かざし」による「浄霊」のみで「治療」をし、両親が逮捕。両親が信仰していた宗教団体の別の信者の子どもも治療を受けずに死亡していた。
- 良かれと思ってやったことが悲劇を招いた。
- 心霊手術
- メスも使わずに臓器を摘出する
- 実際はトリック。ブタの肝臓などを隠しもって、いかにも患者の体内から臓器の一部を取り出したかのように見せる。
- 「スピリチュアル」ケア・カウンセリング
- 江原啓之がある大学の看護師養成課程に客員教授となる話があった(あちこちから批判され、結局とりやめ)。
- もっとも、はるか昔の「医療」は、どれも呪術と結びついたものであっただろう。
天然・自然は体にいい?
- 代替療法によく出てくるキーワード:「天然」「自然」
- 天然のもの、自然のものは体にいいのだろうか?
- 天然のもの、自然のものは環境にやさしい?
- 逆に、人工のものは体に・環境に悪いのだろうか?
- たとえば、農業は自然の改造。人間に都合のいいように土地を作りかえ、作物を植える。下手に農薬を使わなければ、害虫(人間にとっての害)が増え、周辺にも害を及ぼす
- 日頃食べている野菜などは品種改良を繰り返して作られたもの。人工的に「進化」させられた。
自然の毒
- 自然には毒がいっぱいある。
- 毒キノコ、トリカブトなどの植物の根、ジャガイモの芽など
- 自然は厳しい。人間に都合良くできてはいない。
- 長年の経験と知恵で人類は自然に適応してきた。
- 食べられるもの、食べられないものを見分けられるまでには、多くの命が失われたに違いない
- しかし、医療が発達し、食料の増産も可能になり、産業が興り、人間の寿命も飛躍的に伸びた。
- 自然をいかに人間に都合良く作りかえるか、しかも長期的に人間が生きられるように。
- そのためには生物の多様性の確保など人間の「やりたい放題」では済まないこともある。
昔は自然と調和していた?
- 中谷宇吉郎(人工雪を作った人)の随筆より
- ロンドンに下宿していた時(戦前)「......それと今一つは、当時の日本の経済状態も、一つの要因をなしていた。清浄野菜などは夢にも考えられなかった時代のことである。寄生虫の心配なしに、生の野菜がばりばり食べられるということで、何だか別の世界に来たような気がしていた。」
- その後北海道大学に赴任してから「北海道の気候は、ああいう西洋風の野菜の栽培には適しているはずである。しかし市場にあるものでは、下肥を使ったかもしれないという心配が大いにある。それで庭の一部に小さい畑をつくって、そこで妻がレタスを作ることになった。」
- 下肥=糞尿
- 安全にサラダが食べられるのは、化学肥料のおかげ
- さもなければ、よほど手のこんだ栽培法(もちろん価格にはね返る)
食品は化学物質の塊
- 日常触れるものはすべて「化学物質」。天然か人工かは関係ない。
- 日常的に食される食品は、薬のような規制も難しく、危険なものもたくさんある。
- 人工的に作られた薬や添加物は、前半に述べたような厳しいチェックをくぐり抜けてきたもの(ごく稀に予想外の作用が生じることもあるが…)。
- たとえば毎日摂取しても悪影響がない量を見積り、それに安全係数(通常1/100)をかけて、「基準値」を設定する。
- 時々ニュースで「基準値を越える添加物」が話題になるが、たいていの場合(農薬の原液とかでなければ)、少しぐらい摂取しても体に影響が出ることはない。
付加価値、嗜好品としての「自然」
- 無農薬や無添加は(悪い意味ではなく)贅沢品
- 農薬が使えなければ生産量は減り、価格は上昇
- 添加物が使えなければ、廃棄される食品が増えたり、カビ毒による被害が増える
- 無農薬や無添加を好むのは本人の自由。しかし、農薬や添加物への危険性をいたずらに煽るのは問題。
- 何事も「程度問題」。水だって大量に飲めば死ぬ。
- 低ナトリウム血症。2007年、カリフォルニアのラジオ局主催の「大量に水を飲むイベント」で7.8Lの水を飲んだ28歳の女性が水中毒で翌日に死亡。
- マクロビ(マクロビオティック)も「ほどほど」ならば健康にいいかもしれない。説明原理は荒唐無稽な部分が多いが…。
健康食品・ダイエット
- 「食べたらやせる」食品は、ある意味「体には毒」だ
- 「白インゲン豆ダイエット」
- 厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/05/h0522-4.html
- 「白インゲン豆の摂取による健康被害事例について」「平成18年5月6日に、株式会社東京放送系列で放送されたテレビ番組「ぴーかんバディ!」で紹介された調理法により調理した白インゲン豆を摂取した者が、嘔吐、下痢等の消化器症状を呈している件について、都道府県等に寄せられた健康被害事例を調査し(…)」
- 不十分に加熱された豆による中毒
- 「朝バナナダイエット」
- バナナに含まれる酵素が効くとされるが、食べても消化されるだけ。バナナ摂取により満腹になり、総カロリー量が減っただけなのかもしれない。
- 提唱者は同一人物(某大学の元教授)。一部の研究者が次から次へと肩書を背景に新しい方法を提唱する。
つきあいかた
- 「○○という成分が入っているから健康にいいはずだ」
- それを経口摂取した際にも効くかどうかはわからない。
- 消化されておしまい、かもしれない。
- 試験管内実験や動物実験だけでは根拠にならない。
- 副作用があるかもしれない。
- 健康食品やダイエット法も「科学的根拠」が求められるだろう。
- 「科学的根拠」とは何か、をしっかり理解して、かしこくつきあおう
- 健康食品だけに頼るのはダメ! あくまで補助的に。
ポイント
- 「健康食品を安全に利用するためのポイント~12ヶ条~(東京都福祉保健局)
- 「健康食品」を正しく理解しましょう
- 「健康食品」は、素材の種類や食べ方(加工)が一般の食品と異なることがあります。そのため、安全性については一般の食品よりも慎重に考えるようにしましょう。
- 「健康食品」は、あくまで食生活における補助的なものと考えましょう。
- 「健康食品」は、病気や体の不調を治すものではないことを意識しましょう。
- 「健康食品」のご利用前にご確認ください
- 「健康食品」を利用する前に、普段の食生活で、本当に補給する必要のある栄養成分があるか、考えてみてください。
- 健康に役立つ食品機能を紹介する'健康情報'は、そのまま受け入れるのではなく、科学的な視点に基づく判断を行ったうえで参考にしてください。
- 製品を選ぶ際には、表示や広告をよく確認してください。
- 個人輸入やインターネットオークションを利用する際には、製品に関する情報の確認をしてください。
- 保健機能食品制度について理解を深めることは、「健康食品」を利用するうえで重要なことです。
- 特定の成分を過剰に摂取しないように気をつけてください。
- 「健康食品」の利用期間や量などについて記録をとってください。
- 医療機関への相談
- 体調不良を感じたら、すぐに利用をやめて医療機関を受診してください。
- 治療を受けている人が「健康食品」を利用する場合には、医師や薬剤師などに相談してください。
まとめ
- 「効果がある」には二通りの意味がある
- 「処方したら治った、改善した」しかし、本当にその薬や治療法、ダイエット法のおかげなのかはわからない。プラセボ効果だけかもしれない。でも、その人にとっては「良くなった」というのは(思い込みでなければ)事実。そこは否定できない。
- 「プラセボ効果だけでは説明のつかない効果で改善した」こちらが医学的な意味での「効果がある」。他人に勧められるほど意味のあるのはこちら。
- 二重盲検法やランダム化比較試験などを通じて「科学的根拠」を獲得すれば、標準医療に組みこまれていく。
- 標準医療は進歩していく。過去の間違いも正していく。
- 代替医療だけに頼るのはダメ。標準医療にも限界はあるが、あくまでも補助的に。
- ヒトでの臨床試験が不十分な健康食品やダイエット法は、副作用の可能性もあることを念頭に入れておこう。
自分のため、だけではなく…
- 弱っているときは判断力も鈍る。
- 悪意を持っているとは限らない。
- 悪質な代替医療は社会的に批判し、被害者が出にくくしておくことが大事。
- 「ちょっと調べたら」すぐに正しい情報が出るようになっていることも重要
- 医療関係者だけではなく、社会の構成員みんなで改善し、支えあっていきましょう。
- 「根拠に基づいた医療」の考え方は、様々な分野に応用できます。考えてみましょう。