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ダストから微惑星へ

ダストの合体成長
最初、ダストは1m以下の微小なもの。
ランダムに合体を繰り返し、次第に大きくなる。
Figure 4.7: $\sigma $:ダストの断面積、$v$:ダストの速度
ダストが質量密度あるところに、断面積$\sigma $の別のダストが相対速度 $v$でやってくると、時間の間にこのダストが掃く体積は 。その中(体積)にあるダストの質量は。このうち、ぶつ かってくっつく割合(確率)をとすると、の間に、このダストが得 る質量(質量の増分)は、
(1)

これより
(2)

ダストが小さいときは、その半径$D$に対して、幾何学的断面積、が $\sigma $になる。もっと成長して「微惑星」になると、重力で集まってくる効果 も考慮する必要がある(後述)。

ダストがメートルサイズにまで成長すると、ガスとの相互作用(粘性)により、数 百年で太陽まで落ちてしまう(「危険領域」)。どのように回避するか?

ダストの沈殿がすすむと、ダスト層が自身で重力不安定になる(Jeans不安定と本 質的には同じであるが、Kepler回転している効果を考慮する必要がある)。
→ディスクの分裂→「微惑星」の誕生(km)→自己重力天体→原始惑星

つまり、重力不安定で、ミクロンサイズからキロメートルサイズまで一気に成長 することにより、メートルサイズでいる時間を短縮し、太陽まで落ちずにすむ。

微惑星の暴走成長
衝突断面積に重力の効果を考慮する。

Figure 4.8: $\sigma $:ダストの断面積、$D$:ダストの半径
質量$m$、半径$D$の微惑星が近付くと、相対速度$v$で動く他のダストは重力によ り引きつけられ、この微惑星の幾何断面積よりも広い範囲のダストを食 べることができる。この、実効的な断面積を$\sigma $とする。

重力が強いほど$\sigma $は大きくなるので、質量の大きい微惑星は、他の微惑星 よりも大量のダストを食べ、この微惑星だけが急激に太っていく。これを「暴走 成長(runaway growth)」と呼ぶ。

この重力の効果(「重力フォーカシング」)を考慮した断面積を求めてみよう。

微惑星から無限遠にあるダストの初速度を$v_0$、インパクトパラメータ(初速度 のままダストが進んだ場合の直線と、微惑星の中心との距離)を$b$、微惑星に衝 突する直前の速度を、ダストの質量を$m$、微惑星の質量と半径をとしよう。すると、エ ネルギー保存則より、

(3)



初期には距離として良いので、位置エネルギーはゼロ。


ダスト$m$の半径は微惑星に比べ十分小さい

また角運動量保存則より、

(4)

Figure 4.9: $v_0$: ダストの相対初速度、$b$: インパクトパラメータ、$L$: 角運 動量

これらの式より、

 
  (5)
 
  (6)
(7)

ここで
(8)

微惑星は固体であり、ほぼと考えられるので、質量が大きいほど 散乱断面積$\sigma $が大きくなることがわかった。


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NAGASHIMA Masahiro 2009-12-08