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モード間相関

さて、sharp $k$-space filter を採用した場合は、 $\sigma_{12}^2=\sigma_2^2$となるため、kernel が丁度1/2となり、解析的なPS 質量関数を書き下すことができた。しかし、sharp $k$-space filterは、計算を 簡単にするための便法に過ぎず、現実的には top-hat filter を用いるのが望ま しい。無論、top-hat filter による smoothing は、密度場を''smooth''にしな いため、取り扱いがややこしい。そこで、Gaussian filter もしばしば用いられ る。

以下では最初から変数を正規化しておこう。

\begin{displaymath}
\nu_1=\frac{\delta_1}{\sigma_1},\qquad
\nu_2=\frac{\delta_...
...langle\nu_1\nu_2\rangle=\frac{\sigma_{12}^2}{\sigma_1\sigma_2}
\end{displaymath} (4.164)

$\epsilon$は相関係数であり、1以下である。すると2変数Gaussianは
\begin{displaymath}
p(\nu_1,\nu_2)\d\nu_1\d\nu_2=\frac{1}{2\pi}{\bf e}^{-\frac{...
...silon\nu_2)^2}{2(1-\epsilon^2)}-\frac{\nu_2}{2}}\d\nu_1\d\nu_2
\end{displaymath} (4.165)

となる。sharp $k$-space filter の場合は、 $\epsilon=\sigma_2/\sigma_1$で ある。$\epsilon$の形は、
\begin{displaymath}
\epsilon=\frac{4\pi}{\sigma_1\sigma_2(2\pi)^{3}}\int_{0}^{\infty}
\tilde{W}(kR_{1})\tilde{W}(kR_{2})P(k)\d k
\end{displaymath} (4.166)

である。

ここで、sharp $k$-space filter の時に、$P(M_1\vert M_2)$がどうして1/2になった かを改めて考えてみよう。Gaussian random field は、異なる$k$のモード間で は位相が独立であった。ということは、ある$k$まで積分して得られたある点で の$\delta$に、新たに Fourier mode を足す、つまり filtering scale を小さ くすることは、独立な位相のモードを足すことになるため、$\delta$が大きくな る確率と小さくなる確率が等しく1/2づつになることを意味する(どれくらい変化 するかは$P(k)$に依存する)。ということは、$\sigma$の値を時刻に見立て、 $\delta$の値を位置に見立てると、$\delta$は random walk することがわかる。

一方、一般の filter では、filtering scale を小さくすると、より長波長のモー ドの寄与も若干上昇することになる。つまり、filtering scale を変えることに 対して、それまでの履歴をひきずることになる。従って、$\delta>0$の点では、 $\sigma$を上げるにつれて、より$\delta$を上昇させる方向に確率が大きくなる のに対し、$\delta<0$の点では、より減らす方向に確率が大きくなり、random walk にはならない。そして、このことから $P(M_1\vert M_2)>1/2$であることが期待 される。

質量関数への影響を考えると、元の積分方程式に戻って考えてみれば、$P>1/2$ であることから大質量ハローの数はPS質量関数に比べて減ることになる。小質量 ハローの数も一見減るような気がするが、左辺 [ $f(\delta_1\geq\delta_c;M_1)$]の値は変わらないため、小質量ハローの数を 増やして辻褄を合わせる必要がある。よって、PS質量関数に比べ、大質量ハロー の数は減り、小質量ハローの数は増える、ということになる。



NAGASHIMA Masahiro
2009-03-12