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ダークハローの形成史

いままでは同時刻で異なる smoothing scale での密度場の相関に関する話であっ た。これを拡張し、異なる時刻での解析を行おう。$z=z_0$$M=M_0$のハローに collapseする領域で、$z=z_1(>z_0)$での質量関数はどうなっているだろうか。

球対称崩壊モデルでは、実際には $\delta\to\infty$になる点で、もし線型成長が 続いているとした場合の値、$\delta_c$を求めることができた。E-dS宇宙では、 $\delta_c=1.69$であった。もし、$z=z_1$でcollapseする領域を知りたければ、 線型揺らぎは$a=1/(1+z)$に比例して成長するので、redshift $z$でのcollapseの 条件は

\begin{displaymath}
\delta_c(z)=\delta_c(1+z)
\end{displaymath} (4.168)

と書けることになる。

これを用いると、次のような条件付確率を考えればよいことがわかる:

\begin{displaymath}
f(\delta_1\geq\delta_c(z_1);M_1\vert\delta_0=\delta_c(z_0);M_0)
\end{displaymath} (4.169)

さて、積分方程式のkernel$P(M_1\vert M_2)$については、$z=z_1$$M_2$でcollapse する領域の中に $\delta_1\geq\delta_c$の領域がどれくらいあるか、ということ であった。今回は、さらなる条件として $z=z_0$$M_0$$\delta_c$が課せら れる。しかし、これは面倒であるので、以下では sharp $k$-space filterを使 おう。すると、Markov性より、最後の条件はあってもなくても同じであり、1/2 が維持されることがわかる。

これらより、解くべき式は、条件付質量関数を$n(M_1\vert M_0)$として、

\begin{displaymath}
f(\delta_1\geq\delta_c(z_1)\vert\delta_0=\delta_c(z_0))=\fr...
...{2}\int_{M_1}^{\infty}\frac{M'n(M'\vert M_0)}{\bar{\rho}}\d M'
\end{displaymath} (4.170)

ということになる。

左辺は、

\begin{displaymath}
f(\delta_1\geq\delta_c(z_1)\vert\delta_0=\delta_c(z_0))=\fr...
...1}{\sqrt{2\pi}}\int_{y_c}^{\infty}{\bf e}^{-\frac{y^2}{2}}\d y
\end{displaymath} (4.171)

である。ここで、 $y=(\delta_1-\delta_c(z_0))/(S_1-S_0)$, $S=\sigma^2$。両 辺を$M_1$で微分すると、
\begin{displaymath}
\frac{Mn(M\vert M_0)}{\bar{\rho}}=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\fra...
...}{\bf e}^{-\frac{(\delta_c(z_1)-\delta_c(z_0))^2}{2(S_1-S_0)}}
\end{displaymath} (4.172)

となる。なお、左辺は$M_0$でcollapseする領域のうち、質量$M$の天体が占める 質量比を示している。従って、これを個数にするには、$M_0/M$を掛ければよく、 条件付き質量関数は
\begin{displaymath}
N(M,z\vert M_0,z_0)=\frac{M_0}{M}\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\frac...
...3/2}}{\bf e}^{-\frac{(\delta_c(z)-\delta_c(z_0))^2}{2(S-S_0)}}
\end{displaymath} (4.173)

と表される。



NAGASHIMA Masahiro
2009-03-12