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揺らぎの持つ角運動量の成長

領域$\Gamma$が collapse するとして、この領域の持つ角運動量がどうなるかを 調べよう。角運動量$L$は、定義により
\begin{displaymath}
L(t)=\int_{\Gamma}({\bf r-\bar{r}})\times {\bf u}\rho d^{3}r
\end{displaymath} (3.62)

ここで質量保存 $\rho d^{3}x=\bar{\rho}d^{3}q$ ${\bf u}=a\dot{\bf x}$ ${\bf r}=a{\bf x}$を使うと
\begin{displaymath}
L(t)=\bar{\rho}a^{5}\int_{\Gamma}({\bf x-\bar{x}})\times\dot{\bf x}d^{3}q
\end{displaymath} (3.63)

となる。Zel'dovich 近似を用いると、
\begin{displaymath}
L(t)=\bar{\rho}a^{5}\dot{D}\int_{\Gamma}({\bf q-\bar{q}})\times\nabla\varphi d^{3}q
\end{displaymath} (3.64)

である。ここで
\begin{displaymath}
\bar{\bf q}=\Gamma^{-1}\int_{\Gamma}{\bf q}d^{3}q
\end{displaymath} (3.65)

である。これより領域の非球対称性が重要であることがわかる。

次に、potential $\varphi$$\bar{\bf q}$ のまわりに展開する。

\begin{displaymath}
\varphi({\bf q})=\varphi(\bar{\bf q})+({\bf q-\bar{q}})\cdot\nabla\varphi\vert _{\bf q}+\ldots
\end{displaymath} (3.66)

これを式(3.40)に代入すると、
\begin{displaymath}
L(t)=\bar{\rho}a^{5}\dot{D}\int_{\Gamma}\epsilon_{ijk}(q_{j...
...{l}-\bar{q}_{l})\partial_{k}\partial_{l}\varphi({\bar{\bf q}})
\end{displaymath} (3.67)

となる。 $\epsilon_{ijk}$は完全反対称テンソルである。ここで potential の 微分の項を
\begin{displaymath}
{\cal D}_{kl}\equiv\partial_{k}\partial_{l}\varphi({\bar{\bf q}}),
\end{displaymath} (3.68)

inertial tensor を
\begin{displaymath}
{\cal I}_{jl}\equiv\bar{\rho}a^{3}\int_{\Gamma}(q_{j}-\bar{q_{j}})(q_{l}-\bar{q_{l}})
\end{displaymath} (3.69)

とすると
\begin{displaymath}
L(t)=a^{2}\dot{D}\epsilon_{ijk}{\cal D}_{kl}{\cal I}_{jl}
\end{displaymath} (3.70)

となり、時間に依存する項を見ると、E-dS宇宙では
\begin{displaymath}
L(t)\propto a^{2}\dot{D}\propto t
\end{displaymath} (3.71)

と時間の一次に比例して増大することになる。実際には、maximum expansion の あたりで角運動量の獲得は止まり、あとは保存して collapse することになる。 つまり
\begin{displaymath}
\delta=D_{ta}\Delta\varphi=\delta_{ta}\simeq 1.05
\end{displaymath} (3.72)

となるところまで成長する。

inertia tensor を見ると、次元的に ${\cal I}\sim MR^{2}$であり、上の式と合 わせて、これは $M^{5/3}/D_{ta}\propto M^{5/3}t_{ta}^{-2/3}$に比例する。こ れより、maximum expansion での、即ち最終的にハローが獲得する角運動量は

\begin{displaymath}
L_{f}\propto M^{5/3}t_{ta}^{1/3}
\end{displaymath} (3.73)

となる。

通常、角運動量を議論する際は、無次元の spin parameter $\lambda$ を用いる。 これは、

\begin{displaymath}
\lambda\equiv\frac{L\vert E_{\rm tot}\vert^{1/2}}{GM^{5/2}}
\end{displaymath} (3.74)

で定義される。角運動量が0なら0、完全に rotation support になっていれば $\simeq 1$となる。図4に、Catelan & Theuns による $\lambda$の分布を示す。詳細は略すが、これは初期に Gauss 分布する揺らぎの 場を考え、揺らぎのピークになる点のまわりの角運動量の分布がどうなるかを計 算したものである。パラメータになっている$\nu$は揺らぎの高さの尺度で、揺 らぎの偏差を$\sigma$の何倍かを示す( $\nu=\delta/\sigma$)。$\nu$が大きいほ ど早く collapse するので、それだけ獲得する角運動量も小さいということにな る。

いづれの$\nu$にしても、 $\lambda\mathrel{\mathchoice {\vcenter{\offinterlineskip\halign{\hfil
$\displays...
...\offinterlineskip\halign{\hfil$\scriptscriptstyle ...がほとんどを占めている。つまり、 ダークハローはほとんど回転していないということを示している。ただし、これ が銀河になる際には内部のガスがエネルギーを失って収縮するため、結果的には $\lambda\simeq 1$となる。

この分布は、いわゆる log-normal分布で良く fit される。

\begin{displaymath}
p(\lambda)d\lambda=
\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma_{\lambda}}
\...
...n\bar{\lambda})^2}
{2\sigma_{\lambda}^{2}}\right] d\ln\lambda,
\end{displaymath} (3.75)

ここで $\bar{\lambda}$ は平均の$\lambda$ $\sigma_{\lambda}$$\log\lambda$の分散である。大体 $\bar{\lambda}=0.05$ $\sigma_{\lambda}=0.5$となる。

図 4:
\begin{figure}
\epsfxsize =\hsize
\epsfbox{CatelanTheuns.eps}\end{figure}


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NAGASHIMA Masahiro 平成17年2月22日