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球対称解

天体形成に至る非線型段階を記述するモデルとして、球対称に分布した揺らぎ (質量$M$、半径$r$)に対する解がある。運動方程式は、単純に
\begin{displaymath}
\ddot{r}=-\frac{GM(\leq r)}{r^2}
\end{displaymath} (3.50)

であり、これがサイクロイド曲線
$\displaystyle r$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{GM(\leq r)}{C}(1-\cos\theta)$ (3.51)
$\displaystyle t$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{GM(\leq r)}{C^{3/2}}(\theta-\sin\theta)$ (3.52)

を描くことは良く知られている(ただし、宇宙項が存在すると斥力項がつく)。従っ て、揺らぎの発展は、shell 内の平均密度が $\bar{\rho}(\leq r)=3M/4\pi r^3$ となることから求めることができる。初期($\theta\ll 1$)の時、$\theta$で展 開すると、
\begin{displaymath}
\rho=\frac{3M}{4\pi r^{3}}=\frac{1}{6\pi Gt^{2}}\left[
1+\frac{3C}{20}\left(\frac{6t}{GM}\right)^{2/3}+\ldots\right]
\end{displaymath} (3.53)

となる。いま、E-dS宇宙を考えると、平均密度は
\begin{displaymath}
\bar{\rho}=\frac{3H^{2}}{8\pi G}=\frac{1}{6\pi Gt^{2}},
\end{displaymath} (3.54)

線型揺らぎは $\delta_{L}\propto D\propto t^{2/3}$なので、上の球対称解は
\begin{displaymath}
\rho=\bar{\rho}(1+\delta_{L}+\ldots)
\end{displaymath} (3.55)

とみなすことができる。

やがて、球殻内の自己重力により、球殻は宇宙膨張から切離されて収縮をはじめ る。$\theta=\pi$の時に$r$は最大になるが、これを maximum expansion、この 時期を turn around などと呼ぶ。この時の密度は、宇宙の平均密度に対して

\begin{displaymath}
\frac{\rho}{\bar{\rho}}=6\pi Gt^{2}\cdot\frac{3\pi}{32Gt^{2}}=\frac{9\pi^{2}}{16}\simeq 5.5
\end{displaymath} (3.56)

であり、この時刻での線型揺らぎは
\begin{displaymath}
\delta_{L,ta}=\frac{3C}{20}\left(\frac{6t_{ta}}{GM}\right)^{2/3}=
\frac{3}{20}(6\pi)^{2/3}\simeq 1.05\equiv\delta_{ta}
\end{displaymath} (3.57)

となる。つまり、ある時刻$z_{0}$で揺らぎ $\delta_{0}(\ll 1)$を持つ領域は、 線型揺らぎが $\delta_{L}\propto D\propto 1/(1+z)$であることから、 $\delta_{ta}=\delta_{0}D_{ta}/D_{0}$より
\begin{displaymath}
1+z_{ta}=\frac{\delta_{0}}{\delta_{ta}}(1+z_{0})
\end{displaymath} (3.58)

となる$z_{ta}$の時に最大膨張を迎えることになる。

さらに$r$ が再び0になる時点を collapse と定義すると($\theta=2\pi$)、同様 にしてその時刻での線型揺らぎが

\begin{displaymath}
\delta_{L,c}=\frac{3}{20}(12\pi)^{2/3}\simeq 1.69
\end{displaymath} (3.59)

となることがわかる。この時、実際の密度は形式的には発散するが、物理的に考 えると速やかに virial 平衡に達するであろう。この時の半径$r_{c}$を求めよ う。ここで、Energy保存を考慮し、turn around 時(速度0)と、collapse後 (virial平衡) を結ぶと、
\begin{displaymath}
\frac{GM^{2}}{r_{ta}}=\frac{1}{2}\frac{GM^{2}}{r_{c}}
\end{displaymath} (3.60)

となる。つまり、collapse 後の virial 半径$r_{c}$は、最大膨張時の半径 $r_{ta}$の半分であることがわかる。この時の平均密度に対する密度比は、 $\rho_{c}=2^{3}\rho_{ta}$, $t_{c}=2t_{ta}$を考慮すると、
\begin{displaymath}
\frac{\rho_{c}}{\bar{\rho}}=18\pi^{2}\simeq 178
\end{displaymath} (3.61)

となる。従って、collapse直後の天体の内部の平均密度は、その時刻での宇宙の 平均密度のおよそ200倍であることがわかる。

以上を用いると、揺らぎの amplitude を、現在まで線型成長を続けているとし て normalize すると、ある点での揺らぎの大きさと、その点が collapse する 時刻$z_{\rm c}$との間には、 $\delta=\delta_c(1+z_{\rm c})$という関係のあ ることがわかる(詳細は後述)。つまり、初期の揺らぎの分布を見れば、あ る時刻でどれくらいの領域が collapse しているか、mapping することが可能に なる。


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NAGASHIMA Masahiro 平成17年2月22日