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非線型領域

$\delta\sim 1$となると、もはや線型近似は使えず、非線型効果を考慮して計算 をしなければならない。Euler座標での逐次近似で$\delta$の高次の項を求める 方法はあるが、$\delta<1$でしか原理的に使えず、実際には$\delta$がかなり小 さくてもすぐに破綻してしまう。

$N$-body simulation をやってみると、次の図のように線型と非線型の揺らぎが 対応がつくことが知られている(但し、図は個々の揺らぎではなく分散になって いる)。

図 3:
\begin{figure}
\epsfxsize =\hsize
\epsfbox{PeacockDodds.eps}\end{figure}

一方、Lagrange座標での近似、即ち流体素片の運動を追いかける近似はかなり良 い結果を与えることが知られている。First order は Zel'dovich 近似として知 られ、流体素片の位置$r$は、その Lagrange 座標での位置$q$

\begin{displaymath}
{\bf r}=a({\bf q}+D\nabla\varphi)
\end{displaymath} (3.42)

のように、potential $\varphi$で書ける。 固有速度は
\begin{displaymath}
{\bf u}=a{\dot{\bf x}}=a\dot{D}\nabla\varphi
\end{displaymath} (3.43)

であり、式(3.16)を用いると
    $\displaystyle \frac{\dot{D}}{D}\delta+\frac{1}{a}\nabla{\bf u}=0,$ (3.44)
    $\displaystyle \nabla\cdot{\bf u}=a\dot{D}\Delta\varphi,$ (3.45)
    $\displaystyle \to \Delta\varphi=-\frac{\delta}{D}$ (3.46)

となる。

なおこれは1次元シート重力系の exact解になっており、膨張宇宙では収縮する 領域の非等方性がますます強まるという性質を反映して良い近似になっていると 考えられる。

ただし、これもDM粒子のすり抜け(orbit crossing, shell crossing)が起こると 破綻する近似である。

ここで Zel'dovich 近似を用いた天体の崩壊を議論しておく。一様流体 (Lagrange座標${\bf q}$)から崩壊するので、質量保存より

\begin{displaymath}
\rho d^{3}x=\bar{\rho}d^{3}q
\end{displaymath} (3.47)

が成り立つ。従って、密度の発展は
\begin{displaymath}
\rho=\left\vert\frac{d^{3}x}{d^{3}q}\right\vert^{-1}\bar{\rho}\equiv J^{-1}\bar{\rho}
\end{displaymath} (3.48)

で与えられる。この Jacobian $J$は、Zel'dovich 近似を使えば
\begin{displaymath}
J=\prod_{i=1}^{3} (1-D\lambda_{i})
\end{displaymath} (3.49)

となる。ここで $(1-D\lambda_{i})$$J$ の固有値である。つまり、$D$が大 きくなるに従って、固有値の大きい順、即ち初期により潰れている方向に先に崩 壊することになる。これは、膨張宇宙に於ける構造形成は、まづシート的に collapse し、次にフィラメント状になり、やがてノット的になるということを 示唆している。


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NAGASHIMA Masahiro 平成17年2月22日