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膨張率の直接測定

$H=\dot{a}/{a}$であるから、これは空間上のある一点までの距離rとその点の 後退速度vがわかればv/rによって求めることができる。これは銀河を観測す ることで行なわれるが、実際の銀河の観測される後退速度は、個々の銀河の特異 速度を含むため、十分遠方の銀河に対して行なわれなければならない。また、速 度は赤方偏移より精度良く求まるが、距離を求めることは以下で述べるように難 しい。

距離の測定には、所謂「距離梯子(distance ladder)」を一段一段昇って行かね ばならない。まづ、太陽の極近傍($\sim 300$pc)までの星を、年周視差を用いて 正確に決める。次に、それらの星を用いて、HR diagram を構成し、主系列を決 定する。これを用いて、Cepheid 型変光星を含む散開星団までの距離を決める。 Cepheid には、その変光周期と絶対光度の間に良い相関があることが知られてお り、この関係のゼロ点を HR diagram を用いて決めるのである。

次に、近傍銀河までの距離をCepheid を用いて決定する。Cepheidの変光周期を 観測し、そこから得られた絶対等級とみかけの等級との差から距離を求める。 HST 等により約20Mpc ぐらいまでの銀河内の Cepheid を分解することが可能で あり、近傍でのH0の値が求められている。

また、銀河には、その回転速度あるいは速度分散と絶対光度の間に良い相関があ ることが知られている(Tully-Fisher relation; Faber-Jackson relation)。 Cepheid により距離が決定された銀河を用いて、これらの関係のゼロ点を決め、 遠方の銀河に適用する。これにより、200Mpc 程度までの距離が決定できる。

また、Ia型超新星の光度曲線と絶対光度の間にも相関があると考えられており、 これを用いたH0の測定も行なわれている。



NAGASHIMA Masahiro
2000-10-23