next up previous
Next: 密度揺らぎの成長則 Up: 一様等方宇宙を記述する方程式 Previous: Friedmann方程式の意味

輻射、物質、曲率、宇宙項が支配する時期

式(2.3)あるいは(2.14)の右辺の項のそれぞ れが支配的になる時期を調べる(以下 $\rho=\epsilon/c^{2}$の質量密度で見る)。 エネルギー密度において、物質だけでなく輻射の寄与も考慮すると、各項の scale factor に対する依存性は、輻射、物質、曲率、宇宙項の順に $a^{-4},a^{-3}, a^{-2}, a^{0}$である。従って、これらの順に、宇宙膨張への 寄与が重要になる時期が現われる。宇宙初期には曲率や宇宙項は物質密度に比べ て微小であり、宇宙膨張の振舞いは $K=0, \Lambda=0$の Einstein-de Sitter 宇 宙とほぼ同じになる。

まず、輻射優勢期を見る。式(2.3)より、

\begin{displaymath}
H^2=\frac{8\pi G\rho}{3}  \to  \frac{\dot{a}^2}{a^2}\propto a^{-4}
\end{displaymath} (2.19)

であるから、 $\dot{a}\propto a^{-1}$であり、
\begin{displaymath}
a(t)\propto t^{1/2}
\end{displaymath} (2.20)

となる。

やがて輻射のエネルギー密度は急速に落ち、物質の方が優勢になってくる。輻射 と物質のエネルギー密度が等しくなるのがほぼ$a\sim 10^{-4}$の頃である(導出 は省略。現在の宇宙背景輻射の温度と、温度が$1/a$に比例することと、現在の物 質密度が与えられれば求められる)。物質が優勢の時期は、同様にして

\begin{displaymath}
a(t)\propto t^{2/3}
\end{displaymath} (2.21)

となる。

やがて、曲率項が(あれば)効きだしてくる。この時期は、

\begin{displaymath}
\frac{\Omega_{0}}{a^{3}}\simeq \frac{\vert k_{0}\vert}{a^{2}}
\end{displaymath} (2.22)

となる$a(t)$であるから、結局
\begin{displaymath}
a\simeq\frac{\Omega_{0}}{k_{0}}
\end{displaymath} (2.23)

であり、もし宇宙項が0( $\Omega_{\Lambda}=0$)とすると、 $k_{0}=\Omega_{0}-1$であるから
\begin{displaymath}
a\simeq\frac{\Omega_{0}}{\vert\Omega_{0}-1\vert}
\end{displaymath} (2.24)

となる。この場合、式(2.3)より
\begin{displaymath}
a(t)\propto t
\end{displaymath} (2.25)

となる。

もし宇宙項が存在し、宇宙が平坦($k_{0}=0$)であると、比較すべきは

\begin{displaymath}
\frac{\Omega_{0}}{a^{3}}\simeq \Omega_{\Lambda}
\end{displaymath} (2.26)

となるので、宇宙項が支配的になるのは
\begin{displaymath}
a\simeq\left(\frac{\Omega_{0}}{1-\Omega_{0}}\right)^{1/3}
\end{displaymath} (2.27)

となる。この場合は、
\begin{displaymath}
a(t)\propto \exp(\sqrt{H_{0}^{2}\Omega_{\Lambda}}t)
\end{displaymath} (2.28)

と inflation 的膨張を起す。


next up previous
Next: 密度揺らぎの成長則 Up: 一様等方宇宙を記述する方程式 Previous: Friedmann方程式の意味
NAGASHIMA Masahiro
2009-03-12