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連続の式

まず、連続の式(質量保存の式)をLagrange的に考える。体積$\d V$の流体素片の 質量は$\d m=\rho\d V$であるが、これが保存するので
\begin{displaymath}
\frac{\d m}{\d t}=0
\end{displaymath} (3.29)

である。分解すると、
\begin{displaymath}
\frac{\d }{\d t}\left(\rho\d V\right)=\d V\frac{\d\rho}{\d t}+\rho\frac{\d\d V}{\d t}=0
\end{displaymath} (3.30)


\begin{displaymath}
\frac{\d\rho}{\d t}+\frac{\rho}{\d V}\frac{\d\d V}{\d t}=0
\end{displaymath} (3.31)

となる。ここで簡単のため左右にのびた一次元系を考えると、第二項は流体素片の体積の時間 変化であり、それはこの流体素片の右側の端の速度-左側の端の速度、$\d\v $で与えられ る。即ち、
\begin{displaymath}
\frac{\d\d V}{\d t}=\d v
\end{displaymath} (3.32)

これを用いると、
\begin{displaymath}
\frac{\d\rho}{\d t}+\rho\frac{\d\v }{\d V}= \frac{\d\rho}{\d t}+\rho\nabla\cdot\v =0
\end{displaymath} (3.33)

となる。

次にEuler的に見てみよう。

一辺が$\Delta L$の固定された微小な立方体を考える( $\Delta V=\Delta L^3$$\Delta$は空間的に固定された微小量を示すものとする)。この立方体内 の物質の増減を調べよう。この立方体の質量の増減は、立方体への流入・流出に よるので(湧き出し・吸い込みはない)、質量の変化

\begin{displaymath}
\Delta m = \Delta (\rho\Delta V) = \Delta V\Delta\rho
\end{displaymath} (3.34)

がゼロでないとすると、必然的に流れがあることになる。ここで体積$\Delta V$ は一定であることを使った。

次に、流れがあるとき、この立方体に流れ込む・流れ出す物質の量を求めよう。 簡単のため、流れの方向は$x$軸方向であるとする。 速度$v$で物質が流れているとき、時間$\Delta t$の間に入ってくる物質の 量、出ていく物質の量の差は、

\begin{displaymath}
\rho(x) v(x) S \Delta t -\rho(x+\Delta L) v(x+\Delta L) S \Delta t
\end{displaymath} (3.35)

となる。ここで立方体の面積 $S=(\Delta L)^2$である。ここで質量流束 $j\equiv\rho v$を定義すると、上式は
\begin{displaymath}
j(x) S \Delta t - j(x+\Delta L) S \Delta t = [j(x)-j(x+\Del...
...Delta L S\Delta t
= -\frac{\partial j(x)}{\partial x}V\Delta t
\end{displaymath} (3.36)

と変形できる。ここで Taylor 展開を使った。

さて、式(3.6)、(3.8)は等しいはずであるから、

\begin{displaymath}
V\Delta\rho = -\frac{\partial j(x)}{\partial x}V\Delta t
\end{displaymath} (3.37)

である。両辺$V\Delta t$で割ると、
\begin{displaymath}
\frac{\Delta\rho}{\Delta t} = -\frac{\partial j(x)}{\partial x}
\end{displaymath} (3.38)

となるが、左辺は空間を固定し、時間だけを変化させた場合の質量の変化に相当 するので、$\Delta t\to 0$の極限では、これは時間の偏微分を意味する。従っ て、
\begin{displaymath}
\frac{\partial\rho}{\partial t} +\frac{\partial j(x)}{\partial x}=0
\end{displaymath} (3.39)

となる。

いままでは、流れは$x$方向だけと仮定していたが、一般化するとベクトルで書 くことができ、

\begin{displaymath}
\frac{\partial\rho}{\partial t} +\nabla\cdot(\rho{\bf v})=0
\end{displaymath} (3.40)

と書ける。ここで
\begin{displaymath}
\nabla\equiv {\hat{{\mbox{\boldmath$x$}}}}\frac{\partial}{\...
...ial y}+{\hat{\mbox{\boldmath$z$}}}}\frac{\partial}{\partial z}
\end{displaymath} (3.41)

である。 $\hat{{\mbox{\boldmath$x$}}}$などは単位ベクトルである。

さて、Lagrange形式とEuler形式のそれぞれを見比べてみると、Lagrange微分は 以下の関係があることがわかる。

\begin{displaymath}
\frac{\d\rho}{\d t}=\frac{\partial\rho}{\partial t}+\v\nabla\rho
\end{displaymath} (3.42)

本当にこれが成り立っているかを考えよう。簡単のために、また一次元系で考え る。Lagrange微分の中身を考えてみると、
\begin{displaymath}
\frac{\d\rho}{\d t}=\lim_{\Delta t\to 0}\frac{\rho(x+\Delta...
...to 0}\frac{\rho(x+v\Delta t,
t+\Delta t)-\rho(x,t)}{\Delta t}
\end{displaymath} (3.43)

ここで
\begin{displaymath}
\rho(x+v\Delta t, t+\Delta t)\simeq\rho(x,t)+\frac{\partial...
...{\partial
t}\Delta t+v\frac{\partial\rho}{\partial x}\Delta t
\end{displaymath} (3.44)

であるので、結局
\begin{displaymath}
\frac{\d\rho}{\d t}=\frac{\partial\rho}{\partial t}+\v\cdot\nabla\rho
\end{displaymath} (3.45)

となり、実際に成り立っていることがわかる。


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NAGASHIMA Masahiro
2009-03-12