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ガスの冷却

dark halo が collapse すると、その重力エネルギーは衝撃波により内部のガス を加熱する。重力エネルギーが解放されるので、ガスの温度は大体 virial 温度 程度になると考えられる。
\begin{displaymath}
kT_{gas}\simeq kT_{vir}\simeq \frac{GMm_{p}}{r}
\end{displaymath} (5.97)

銀河より大きなスケールでは、大体$T>10^{4-5}$K ぐらいになり、銀河団スケー ルでは $10^{7}$K (1keV) 程度になる。

輻射機構を考えると、$10^{4-5}$K では水素原子の line cooling、即ち衝突に より電子の準位がたたき上げられ、その後自発的に準位を下げる際に光子を放出 することでエネルギーを散逸させる機構が重要になる。一方、$10^{7}$程度では、 baryon はほぼ完全にイオン化しており、電子による制動輻射(bremsstrahlung) が重要になる。

エネルギー散逸率を普通 cooling function と呼び、$\Lambda$で表す。これは 温度と重元素量の関数になっている。実際の散逸率はガスの個数密度$n$を用い て$n\Lambda$となる。

図 11: Sutherland & Dopita (1993)
\begin{figure}
\epsfxsize =\hsize
\epsfbox{fig1-2.eps}\end{figure}

ここで halo 中のガスの冷却の time-scale を見積ってみる。これは内部エネル ギーがこの散逸率で散逸しきるのに要する time-scale なので、

\begin{displaymath}
t_{\rm cool}\simeq \frac{kT}{n\Lambda}
\end{displaymath} (5.98)

となる。これと系の dynamical time-scale と比較する。dynamical time-scale は
\begin{displaymath}
t_{\rm dyn}\simeq \frac{1}{\sqrt{G\rho}}
\end{displaymath} (5.99)

である。もし、collapse した halo の状態が $t_{\rm cool}\ll t_{\rm dyn}$ ならば、内部の baryon は shock 加熱で生じた温度による圧力を感じることな く、dynamical time-scale で halo 中心部に落ち込んでいく。一方、逆の場合 は、銀河団ガスのように圧力で支えられ、準静的にエネルギーを散逸していく。 この様子をプロットすると図12のようになり、典型的な銀 河のスケールが冷却の効く範囲に納まっていることがわかる。

図 12:
\begin{figure}
\epsfxsize =\hsize
\epsfbox{ReesOstriker.eps}\end{figure}

現実の宇宙では、 $z\mathrel{\mathchoice {\vcenter{\offinterlineskip\halign{\hfil
$\displaystyle ...程度ではQSOからのUV背景輻射により、cooling が抑 えられる可能性がある。ガスが多いと optical depth も大きいので shielding が効いて UV が浸透しにくくなるが、小さい halo では加熱がよく効き得る。従っ て、dwarf 銀河の形成を抑える可能性がある。

図 13: Nagashima, Gouda & Sugiura (1999)



NAGASHIMA Masahiro 平成17年2月22日