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天体の個数密度

ここでは前節の球対称解と揺らぎの Gaussian 分布から、質量Mの天体の個数 密度 $n(M){\rm d}M$を見積る Press-Schechter 近似を紹介する[8]。まづ、 揺らぎを質量Mのスケール( $R\simeq[3M/4\pi\rho_0]^{1/3}$)で均す。均され た場で $\delta_M=\delta_c$となった点が、質量Mの天体になると考える。
$\displaystyle \delta_M({\bf x})$ = $\displaystyle \int W_M({\bf x'-x})\delta({\bf x'}){\rm d}{\bf x'}$ (33)
  = $\displaystyle \int\tilde{W}(kR)\delta_{\bf k}{\bf e}^{-i\bf k\cdot x}\frac{{\rm d}{\bf k}}{(2\pi)^3}$ (34)

ここでWMは均すための window関数であり、$\tilde{W}$はそのFourier成分 である。window関数の形としては、top-hat 型や Gaussian型がよく用いられる が、計算が簡単になるため Fourier空間での top-hat 型である sharp k-space filter もよく用いられる。スケールMでの揺らぎの分散は、

\begin{displaymath}\sigma^2(M)\equiv\langle\delta_M^2\rangle=\int\tilde{W}^2(kR)P(k){\rm d}^3k
\end{displaymath} (35)

となるが、window関数に入っている cut-off のスケールを $k_c\simeq 2\pi/R$とすると、

\begin{displaymath}\sigma^2(M)\simeq k_c^3P(k_c)\propto k_c^{3+n}\propto M^{-\frac{3+n}{3}}
\end{displaymath} (36)

となる。ここで、 $P(k)\propto k^n$とおいた。5.2で述べ たように、CDMモデルでは $n\mathrel{\mathchoice {\vcenter{\offinterlineskip\halign{\hfil
$\displaystyle ...となる。

さて、Mの場でcollapse している領域は $\delta_M\geq\delta_c$であるので、 その割合は

\begin{displaymath}F(M)=2\int_{\delta_c}^{\infty}f(\delta;\sigma_M){\rm d}\delta
\end{displaymath} (37)

と書ける。ここで factor 2 は、$\delta<0$の領域も含めて全領域を考慮するた めにつけられている。この領域が質量M以上の天体に含まれているので、

\begin{displaymath}F(M)=\int_M^{\infty}\frac{M'n(M')}{\rho_0}{\rm d}M'
\end{displaymath} (38)

と関係づけられる。質量Mの天体の個数密度は、M以上の天体になっている領 域から $M+{\rm d}M$以上の天体になっている領域を引いたものを、一つのMの天体が 占める領域$M/\rho_0$で割ったものに等しいから、
$\displaystyle n(M)=-\frac{\rho_0}{M}\frac{{\rm d} F(M)}{{\rm d} M}
=-\sqrt{\fra...
...frac{{\rm d}\ln\sigma_M}{{\rm d}\ln M}{\bf e}^{-\frac{\delta_c^2}{2\sigma^2_M}}$     (39)

となる。これをPress-Schechter質量関数と呼ぶが、n>-3の場合のみ適用可能 であることに注意しなければならない。



NAGASHIMA Masahiro
2000-10-23