next up previous
Next: 球対称解 Up: 構造形成 Previous: 密度揺らぎの成長則

  
密度揺らぎの統計的性質

密度揺らぎ$\delta$は、 $\delta\ll 1$の時代には通常 random Gaussian 揺らぎ であると仮定される。揺らぎの分散を $\sigma^2=\langle\delta^2\rangle$と置 くと、分布関数は

\begin{displaymath}f(\delta){\rm d}\delta=\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}\exp\left(-\frac{\delta^2}{2\sigma^2}\right){\rm d}\delta
\end{displaymath} (27)

となる。$\delta$のFourie変換は、
$\displaystyle \delta_{\bf k}\equiv\vert\delta_{\bf k}\vert{\bf e}^{i\phi_{\bf k}}=\int\delta({\bf x}){\bf e}^{i{\bf k\cdot x}}{\rm d}{\bf x}$     (28)

であり、 $\phi_{\bf k}$$\bf k$成分の位相である。random Gaussian 揺らぎ は位相に相関がなく、

\begin{displaymath}\langle\phi_{\bf k}\phi_{\bf k'}\rangle\propto\delta_{\bf k,k'}
\end{displaymath} (29)

である。amplitude の自乗平均は、power spectrum と呼ばれ、

\begin{displaymath}P(k)\equiv\langle\vert\delta_{\bf k}^2\vert\rangle
\end{displaymath} (30)

で定義される。ここで $\langle\rangle$は ensemble平均を表し、また一様等方 性より $P({\bf k})=P(k)$とした。重要な関係として、二体相関関数 $\xi(r)\equiv\langle\delta({\bf x})\delta({\bf x+r})\rangle$

\begin{displaymath}P(k)=\int\xi(r){\bf e}^{i\bf k\cdot x}{\rm d}{\bf x}
\end{displaymath} (31)

というFourier変換の関係にある。また、Gaussian random field の特徴として、 P(k)或いは$\xi(r)$によって、一意的に分布が定まる。

次に、power spectrum の時間進化を見よう。通常、inflation直後に生成される 揺らぎは $P(k)\propto k$と仮定され、Harrison-Zel'dovich spectrum と呼ばれ る。前節で見たように、 $t<t_{\rm eq}$では horizon より大きい揺らぎはa2に比例して成長し、horizon 内の揺らぎは成長しない。一方、 $t>t_{\rm eq}$の 揺らぎは、どのスケールでも一様に成長する。従って、その様子を図に描くと、 FIG.3のようになる。なお、分散に直すと、 $\sigma^2\simeq\int
P(k){\rm d}^3k\simeq k^3P(k)$であるから、短波長側( $k>k_{\rm eq}$)では $\sigma\sim\mbox{const.}$となる。ただし、実際には完全に成長が止まるわけ ではなく、$\log$的な成長があるため、完全に一定値になるわけではない。


  
Figure 3:
\begin{figure}\epsfxsize=8cm
\epsfbox{power.eps}
\end{figure}



NAGASHIMA Masahiro
2000-10-23