next up previous
Next: まとめと展望 Up: 力学的テスト Previous: Redshift distortion

銀河団の質量-光度比

銀河団中のbaryon質量は、optical の観測から得られる銀河の個数と、X線光度 から得られる銀河団ガス(ICM)から求めることができる。一方、全質量 $M_{\rm
tot}$は、銀河同士の速度分散を測れば得られる。全銀河の質量を $M_{\rm gal}$、 ICMの質量を $M_{\rm gas}$とすると、銀河団からbaryonが逃げないとすれば、

\begin{displaymath}\frac{\Omega_{\rm b}}{\Omega_0}=\frac{M_{\rm gal}+M_{\rm gas}}{M_{\rm tot}}
\end{displaymath} (53)

となり、Big Bang 元素合成理論から $\Omega_{\rm b}$を与えてやれば $\Omega_0$が求まる。ここで $\Omega_{\rm b}$は baryon 密度パラメータである。

以下の議論は White et al. (1993)の議論に基づく[10]。Coma銀河団の観 測より、全銀河の光度が $(1.8-1.95)\times 10^{12}h^{-2}L_{\odot}$と求まっ ている($L_{\odot}$は太陽光度)。一方、幾つかの銀河の観測から、銀河の質量- 光度比が [M/L]=8.0h(L/L*)0.35であることがわかっている([]は太陽の質 量-光度比を単位としていることを示す。また $L_*=10^{10}h^{-2}L_{\odot}$)。 Coma銀河団銀河の光度関数を用いて平均すると、 $\langle[M/L]\rangle=6.4h$と なる。ここから、銀河の総質量を求めると、

\begin{displaymath}M_{\rm gal}=1.0\pm 0.2\times 10^{13}h^{-1}M_{\odot}
\end{displaymath} (54)

となる。一方、X線の観測から、ICMの質量が

\begin{displaymath}M_{\rm gas}=5.45\pm 0.98\times 10^{13}h^{-5/2}M_{\odot}
\end{displaymath} (55)

と求まっている。

DMを含む全質量の評価には様々な方法があるが、静水圧平衡 ${\rm d}p/{\rm d}r=-GM\rho/r^2$(圧力pはガスなら $\rho kT/\mu m_{\rm p}$、銀河分布なら $\rho\sigma^2$とすればよい)からは大体 $M_{\rm tot}\simeq 7\times
10^{14}h^{-1}M_{\odot}$と求まっている。また数値シミュレーションからは、 およそ $M_{\rm tot}\simeq 10^{15}h^{-1}M_{\odot}$という値が得られている。

以上の値から、

\begin{displaymath}\frac{\Omega_{\rm b}}{\Omega_0}=\frac{M_{\rm gal}+M_{\rm gas}...
...criptscriptstyle ... (56)

という結果が得られている。元素合成理論から予想される、 $\Omega_{\rm
b}\simeq 0.0125h^{-2}$という値を用いると、およそ $\Omega_0\mathrel{\mathchoice {\vcenter{\offinterlineskip\halign{\hfil
$\display...
...\offinterlineskip\halign{\hfil$\scriptscriptstyle ...という 制限が得られることになる。



NAGASHIMA Masahiro
2000-10-23