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Sunyaev-Zel'dovich 効果

宇宙には 3K のCMB photon が充満しているが、これが銀河団内の高温の電離ガ ス( $T\sim 10^8K$)と衝突すると、逆compton散乱により、エネルギーを与えられ る。これは CMB の Rayleigh-Jeans 側の photon を減らし、Wien 側に運ぶので、 低温側ではより低温に、高温側ではより高温になったように見える。銀河団のサ イズをlcとし、球対称であると仮定すると、CMB の温度変化から奥行きを推 定できるので、銀河団の実直径がわかることになる。従って、それを銀河団を見 込む角度$\theta$と比較することによって、H0を得ることができる。

銀河団ガス(ICM)のX線表面輝度SXは、

\begin{displaymath}S_X=\int\epsilon_X {\rm d}l\simeq\epsilon_0 n_{\rm e}^2 T_{\rm e}^{1/2}l_c
\end{displaymath} (11)

で与えられる。ここで $\epsilon_X$はemissivity、 $n_{\rm e}, T_{\rm e}$はICM の電子密度及び温度である。一方、CMBの温度変化$\Delta T$

\begin{displaymath}\Delta T\simeq-2T_{\rm r}\sigma_{\rm T}n_{\rm e}\frac{kT_{\rm e}}{m_{\rm e}c^2}l_{c}
\end{displaymath} (12)

と書ける。ここで$T_{\rm r}$はCMBの温度、 $\sigma_{\rm T}$はThomson断面積 である。ここから密度を消去すると、

\begin{displaymath}\frac{S_X}{(\Delta T)^2}\simeq\frac{\epsilon_0 T_{\rm e}^{1/2...
...^2}\left(\frac{m_{\rm e}c^2}{kT_{\rm e}}\right)^2\frac{1}{l_c}
\end{displaymath} (13)

となり、 $S_X, \Delta T, T_{\rm e}, T_{\rm r}$を観測してlcを求めること ができる。あとは $l_c\simeq\theta d\simeq (v/H_0)d$であるから、銀河団の視 直径と赤方偏移からH0が求まる。この方法では、例えば $H_0\simeq 60\pm
20$km s-1 Mpc-1という値が得られている[7]。



NAGASHIMA Masahiro
2000-10-23